農家からみた食料・農業・農村白書とその使い方

政策・制度

食料・農業・農村白書」(以下、白書という)という報告書をご覧になったことはありますか。農林水産省が毎年作成する400ページを超える分厚い報告書です。なかなか手に取る機会がないかもしれませんが、農業政策を勉強・理解するのに役に立つ資料の一つですので、簡単にご紹介いたします。農家や農業に携わわる方、農業に関心のある方の参考になれば幸いです。

白書を見る方法

白書の特徴としては、網羅的・体系的に農業政策がしっかりまとめられている点です。したがって、調べたいことについてクイックにまとまった情報を得ることができます。白書にアクセスする方法は2つあります。

① 農林水産省のホームページで見る

こちらでは、調べたい項目をキーワード検索することもできますので、調べたいことについて集中的に知ることもできます。


書籍で読む
amazonなどオンラインショップで購入することもできますし、大きな本屋さんや公立の図書館にも置いてあると思います。

毎年発行されるものですし、私の手元にある令和2年版では、価格2,600円(税別)ですので気軽に買えるものではないかもしれませんので、図書館で借りるという手段はおすすめです。

おすすめの白書の利用方法

農家の方におすすめの見方として、最新の農業政策の方向性を理解することができます。農林水産省は、今後どこに力点を置いた政策を実施するのかわかります。つまり予算などそちらに振り向けられますので、自身の経営へのヒント・ビジネスチャンスを見つけることができるかもしれません。
また、消費者の方であれば、食の安全性について調べたりすることも可能ですし、学生の方であれば、農業問題について幅広く体系的な理解に役立ちます。
それぞれの立場の人がそれぞれの視点で白書を活用することができます。

一方で、この白書は、分量としては400ページを超える大作です。したがって、隅から隅まで読むという利用方法は、一般的にはおすすめできません。白書のすべてを読む人としては、農林水産省で働きたくて、面接を受けるため農林水産行政を詳しく知りたいという人くらいでしょうか。

余談ですが、私は一時期、農林水産省で働いており、入省前に日本農業新聞を購読していたことが面接に非常に役立ちました。

食料・農業・農村白書の作成の法的根拠

次に、このような白書が作成されているのかまとめておきます。白書は食料・農業・農村基本法第14条第1項及び第2項の規定に基づいて作成されています。参考に条文を掲載しておきます。つまり白書は法律に則って作成されるしっかりとした報告書です。

第十四条 政府は、毎年、国会に、食料、農業及び農村の動向並びに政府が食料、農業及び農村に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
2 政府は、毎年、前項の報告に係る食料、農業及び農村の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

食料・農業・農村基本法を抜粋

ちなみに”白書”という言葉の元は、イギリスでの政府が発行する報告書”ホワイトペーパー”の日本語訳です。

イギリスでは、国会または政府の報告書をブルーブック(青書)というが、外交の実情を報告する文書に白い表紙を使ったことから、ブルーブックより簡単な報告書をホワイトペーパーと呼ぶようになった。

デジタル大辞泉

白書の原案作成は、農林水産省大臣官房広報評価課情報分析室で行っております。
食料・農業・農村政策審議会企画部会にて原案を審議し答申するという形式をとっております。

農林水産省では、食料・農業・農村白書以外にも、森林・林業白書、食育白書、水産白書、ジュニア農林水産白書といった白書を作成しています。

公表までのスケジュール

白書が公表されるまでの主なスケジュールは2022年版の実績を確認すると次の流れになっております。原案を農林水産省が作成し、食料・農業・農村政策審議会企画部会にて審議・答申を経て閣議決定・公表されています。

1月 企画部会にて構成案を審議

3月 企画部会にて骨子案を審議

4月 企画部会にて概要案を審議、答申

5月(与党で議論を経て)閣議決定、公表

7月 白書の内容について、各農政局単位のブロック説明会(web説明会)

白書についての個人的な思い出

以下、完全に余談です。まず、結論から言いますと、個人的に、白書については良い思い出はありません。それは、私が農林水産省に勤務していた時代の出来事によります。ちょうど入省して1~2年目に白書の作成にかかわる機会がありました。大臣官房で作成した原案を各局で精査・調整するのですが、その一つの局の担当窓口が私でした。
その窓口の業務の一つとして、企画部会に局の幹部を出席してもらう必要ありました。事前に出席してもらう予定の幹部に私から資料の説明をするわけですが、内容について大して興味がなく理解できていなかった私は、出席をお願いした幹部からの質問に対し、さっぱり答えらませんでした。そうこうしているうちに、ヒートアップした幹部にブチ切れられ、相当長い時間(と感じただけかもしれません)怒鳴られ続けました。不勉強だった私のせいですが、入省して1~2年で局全部の業務を知ってるわけないだろ、と今でも思ったり思わなかったり。そんなこんなで、食料・農業・農村白書を見ると当時の嫌な気分が思い出されます。

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