親元就農者が会社員から農業に転職する時期(年齢)について考えたいこと

親元就農者が会社員から農業に転職する場合に考えたいこと 農業

農家で生まれ育った方であれば、「農業を継ぐかどうか」は誰しも一度は考えたことがあるテーマだと思います。近年では、学校を卒業をすぐに農業を継ぐ人は少なく、一度は会社員などサラリーマンを経て就農する場合が多いです。そうであれば、どのタイミングで脱サラ→就農するかという悩ましい問題があります。タイミングによって、メリット・デメリットがあります。

就農する時期について、その良し悪しについて、独断と偏見でまとめてみました。農家を継ぐタイミングを計っている人の参考になれば幸いです。
なお、今回の考察では、基本的に農家に生まれた方が親元就農することを念頭にしています。

就農のタイミングによるトレードオフ

当たり前ですが、早い時期に脱サラするほど、農業をする年数が長くなりますし、会社員等を長く勤めると農業で生計を立てる時期が短くなります。


例えば、次の点のトレードオフ(何かを得ると、別の何かを失う)になろうかと思います。

早く就農した場合 ⇔ 遅く就農した場合 

  • 農業で得られる経験 ⇔ 会社員等で得られる経験
  • 就農時貯蓄小 ⇔ 就農時貯蓄
  • 農業に対する気力大 ⇔ 農業に対する気力
  • 期待できる年金小 ⇔ 期待できる年金

また、タイミングによっては、家族との関係農地維持・相続の問題も絡んでくる可能性もあります。人それぞれの状況により多少の条件の違いはあるかと思いますが、一般的に考えるべき点に考えてみます。

以下、会社員等の年数がの順で見ていきます。

(短)会社員等を数年経て就農

早めに会社員等から農家に転職する場合です。20代~30代前半での農業を継ぐイメージです。
会社員等として一通りの経験を積んでおりますが、責任のある仕事や修羅場をしていない場合もありそうです。全くの主観ですが、世の中の仕組み、ビジネスの仕組みなどを十分考えられて行動できたかというと少し物足りないかもしれません。もちろん、会社員として過ごした環境に大きく影響されますが、特に、特定の役割しか与えられない大企業だと経験不足もあるかもです。また、貯蓄をするのも十分な期間がとれず就農時に借り入れが必要になる場合もあろうかと思います。個人事業の農家であれば基本的には、国民年金保険に加入しますので、厚生年金などに比べると、年金の期待値は小さくなります。

また、全くおせっかいな話ですが、就農時に家庭があるかどうかは今後の人生に大きく影響しそうです。会社員等に比べて農家は出会いの機会が極端に少ないと感じます。農繁期は休みも取得しにくいです。日常で出会う人も限られます。
一方、農業をやるにあたっては、若くて体力・気力も十分ですし、農業を長く続けられると思えば、経営に対する抱負も多岐にわたるでしょうし、色々挑戦できて充実することが期待できます。今後、農業技術も相当身につくと思います。また、地域においても若いと何かと期待され、面倒も見てくれることが期待できます。
このタイミングであれば、農家である親も健在である可能性が高く、経営・技術をスムーズに引き継げる可能性もありますし、初期投資がほとんど必要ない可能性もあります。

(中)会社員等を十数年以上経て、早期退職し就農

そこそこ会社員等として生活したのちに就農する場合です。会社員の定年を待たずして就農し、30代後半から50代に農業を継ぐイメージです。
会社員として、十分な経験値を積んでおり、組織での責任ある立場も経験し、ビジネスの現場、組織で働くコツも十分身についていることが期待できます。世の中の仕組みはほとんど理解できているでしょう。
貯蓄もそれなりに準備できており、厚生年金もそれなりに期待できます。退職金が満額もらえないのはもったいない気もしますが、それなりにはもらえると思います。したがって、就農するにあたって借り入れに頼らなくてもある程度自己資金で賄えるはずです。また、まだまだ体力的にも気力的にももう一花咲かせる段階ですので、農業で実績を出すことも可能です。これまでの社会人経験が十分生かせ、農業の世界においても得意なことで秀でる可能性が高いです。農村ではまだまだ若手の部類ですので地域活動など活躍できる場面は多いです。
一方、農業を継ぐ場合、親の年齢は気になるところです。親の年齢的に経営の引継・継続ができるかどうかは就農後の経営に大きく影響します。親の引退後、期間が開けばあくほど設備やビジネスモデルが引き継げなくなる可能性がありますので、要注意です。

(長)会社員を定年後退職後

会社員の生活を満了しましたので、年金や退職金は満額に近く得られることができ、金銭面での不安は少なくなっているでしょう。農業を継ぐ動機としては、先祖から受け継いだ農地の維持・管理がメインとなるでしょうか。定年後も身体が動き続ける限りは農業ができます。一方で、余命の長さを考えると、農業を経営的に大きくしたり野心的に経営を行うインセンティブは低いでしょう。維持管理できれば十分という考えになりそうです。ビジネスとして農業をしてみたいという方はもっと早く就農することが必要です。
また、子供も独立している可能性が高く、さほど農業で稼げなくとも年金+αで十分生活が成り立ちそうです。就農より以前に、親が農業を引退した場合は、それまでの農地の引接ぎが上手くいくかが気がかりです。就農するまで草刈り等の最低限の管理をするか、誰かに耕作をお願いするか(その場合はスムーズに農地が返ってくるか)検討しておく必要があります。
また、60歳代は農村ではまだまだ若手のこともあります。どうしても、会社員でそれなりの役職にあった人は、農村の人に対し謙虚になれない例も見聞きしますので、謙虚になって人間関係を構築できるかどうかは重要になってきます。

わが身を振り返る

私自身、大学卒業後トータル13年ほど公務員&会社員を経て、親元で就農しました。長男だったこともあり、就職して以来、農業・農地のことなどは気がかりではありました。一方で、就農するにしても、定年まで会社員として働いてから就農するという選択もありましたし、実際そのつもりでいました。

しかしながら、10年以上サラリーマンをやったあたりから、会社員の定年になる頃の自分の姿がなんとなく想像できてしまって、このままでよいのか考えるようになりました。また、親の年齢的にもそろそろ引退が間近に迫っており、私が定年するまで、20数年間の農地の管理をどうするのかという問題がありました。
それならば、このタイミングで農業をやってみるのも面白いかなという結論に至りました。最初の数年は金銭的に不安がありましたが、技術的なことや、農地・施設の確保などは親の協力によりスムーズに就農が可能でした。

今から就農当時のことを振り返ると、そんなに悪くないタイミングでの就農だったかなと思っています。いくつか会社員でやりきれなかった悔いの残ることもありますが(農家では決して叶わないこと)、それも人生かなと思っています。

以下は、私が会社員を退職すると決断し、就農前に読んで役に立った書籍のご紹介です。

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