農業をする上で様々な行政の支援を受けるためには、”認定農業者”や”認定新規就農者”になる必要があります。この度、京都長尾ファームは認定農業者になりましたのでその手順などをまとめておきます。これから認定農業者になる方へ参考になれば幸いです。
認定農業者になろうと思ったきっかけ
農業を始めて、しばらくは認定農業者になる必要性は感じていませんでした。
もちろん、就農前から、認定農業者制度(制度の詳細は次項で解説)があることや、認定農業者になることによってさまざまな政策支援が受けられることについても知っていました。具体的な政策支援は、融資、税制や補助金等です。しかし、「当面、お金も借りる予定ないし、手続きも面倒そうだし認定農業者になる必要もないかなー」なんて思ってました。
しかしながら、その考えを改める出来事がありました。2018年台風21号によって家屋や農業施設に大きな被害がありました。私が農業を営む亀岡市でもパイプハウスの倒壊が多くみられました。被害が大きく、広範囲に渡ったため。パイプハウスの復旧に対し京都府や亀岡市から補助金が出ることを新聞報道で知りました。その報道によると、補助事業の対象が「認定農業者」となっていました。(実際には、認定農業者だけではなく、ある程度売り上げのある農業者は復旧事業の対象でありることが判明しましたが。)その新聞報道を読んだときに、万一のときに認定農業者でないと、政策的な支援を受けることができない可能性がありうることに気が付きました。そのため、早々に認定農業者にはなるべきと判断しました。
といっても、腰の重い私は実際に申請するまで一年以上かけてしまいましたが・・・。
認定農業者制度について
認定農業者とは、一言でいうと、「効率的かつ安定的な農業経営を目指して経営改善に取り組む農業経営者」です。
”目指して”というところがポイントです。具体的には、農業経営の目標に向けて、自らの創意工夫に基づき、経営の改善を進めようとする計画である”農業経営改善計画”を作成し、その計画が市町村に認めれれば認定農業者になることができます。
なぜ、このような制度があるのか。その背景を簡単に説明すると、日本の農業は今後、高齢化や農家の減少が進んでいます。そのような中で、国として、農業が産業として発展し、食料の安定供給・多面的機能を達成することが必要だとしています。そのためには、生産性と収益性が高く、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担うことが必要と考えています。その経営体を育成する手段として国は認定農業者制度を運用しています。認定農業者制度は農業経営基盤強化促進法という法律に基づき運用されているしっかりした制度ですので、相当の期間は継続することが見込まれる制度です。
正確な制度の概要は以下の通りです、農林水産省ウェブサイトからの引用です。
認定農業者制度は、農業者が農業経営基盤強化促進基本構想に示された農業経営の目標に向けて、自らの創意工夫に基づき、経営の改善を進めようとする計画を市町村等(複数市町村で農業を営む農業者が経営改善計画の認定を申請する場合は、営農区域に応じて都道府県又は国が認定)が認定し、これらの認定を受けた農業者に対して重点的に支援措置を講じようとするものです。
ご参考に国が目指す農業の姿、農政が分かりやすく書かれている書籍を参考にご紹介しておきます。元農林水産省事務次官の書かれた書籍です。認定農業者制度の意図など当時の状況などと合わせて書かれています。
実際の手続き
私の事例です。
まず、手続きの担当窓口に連絡をしました。基本的には市町村が窓口になります。私の場合は亀岡市の農林振興課が窓口ですので、窓口に行き認定農業者になりたい旨を相談しました。5分ほどで簡単に手続きの説明をしてもらい、”農業経営改善計画”の様式と記入要領をいただきました。さらに何度も書き換えが生じることが予想されますので、Excelの様式も電子メールで送ってもらいました。様式は農林水産省のサイトでも入手できますが、各市町村により様式の変更があるかもしれませんので、市町村に問い合わせた方が無難です。なお、最近、様式が新しくなったようです。
その際、書く際のポイントとして伝えられたのは、「所得」と「労働時間」の目標です。亀岡市の場合は、目標となる所得が400万円以上、労働時間が2,000時間以内になるよう計画を作るように言われました。ただし、この所得と労働時間の目標値は、市町村ごとに定める「農業経営基盤強化促進基本構想」により異なりますのでご注意ください。
あとは、様式に沿って記入していきます。農業経営を実際行っていれば、割とすんなり記入できると思います。一度、自分の思うように記入してから、市町村の担当の方と相談してみました。担当の方から修正のアドバイスをもらいました。亀岡市の担当の方は、元農協の職員の方で、現場に非常に精通しておられましたので、的確なアドバイスがいただけ、非常に助かりました。計画は農作物の単収や単価を基に計算するのですが、これが非現実的なデータだと計画が認めれらない可能性があるので注意が必要です。
修正のアドバイスをいただいただき、修正後提出したところ、数週間で認定通知をいただきました。
認定農業者になったメリットと感想
認定農業者になってすぐに、何かメリットがあるわけではありませんが、認定農業者制度を詳しく知らない方が聞くと、すごい農家と思ってもらえるかもしれません。
また、今後、利用できる制度としては農林水産省のウェブサイトに資料が掲載されています。
デメリットは特にないように思いますが、認定農業者になれば、5年ごとに計画を更新する必要があります。
認定農業者になることはそれほど困難ではありませんが、いざ必要となったときに、書類作成の手続きや審査を考えると1か月以上は時間がかかるので時間に余裕のある時に、手続きをしておくことをお勧めします。