食品消費税ゼロ、農家への影響

会計・確定申告

衆議院選挙を前に、自民党を含む各党が「食品消費税ゼロ」を主張しています。
インパクトも大きく、消費者にメリットが大きいことは分かりますし、ニュースなども主にその観点から取り上げられています。
しかしながら、一農家の目線で見たとき、本当にすべての農家にとってプラスになるのでしょうか。結論から言えば、特に消費税の免税事業者や簡易課税を選択している農家にとっては、不利に働く可能性があると考えられます。
農家と一口で言っても、
・食品の生産・販売が中心で、食品消費税ゼロの対象となる経営
・作業受託や苗もの生産など、食品消費税ゼロの対象とならない売り上げが多い経営
により、事業内容によって影響は異なります。とはいえ、特に小規模な農家にとっては思わぬ形で手取りが減る可能性も想定されます。
本記事では、「食品消費税ゼロ」が農家経営にどのような影響を与えるのかを整理しながら、ご自身の経営にとってプラスが大きいのか、マイナスが大きいのかを考えるきっかけになれば幸いです。

食品消費税ゼロには2種類ある

まず前提として、現時点では”食品消費税ゼロ”が消費税の「非課税」と「ゼロ税率(0%)」のどちらになるか決まっておりません。この違いによって、影響が変わります。政治的な議論では一括りにされがちですが、税務上は全く別の制度です。

非課税:そもそも消費税を食品にかけない方式です。この場合、仕入税額控除もできません。つまり、
・売上にかかる消費税が0円
・仕入や資材にかかった消費税が控除出来ない
となり、価格転嫁が出来なければ収益を圧迫する可能性があります。

ゼロ税率(0%):税率0%ですが、課税取引である点は変わらず仕入税額控除はできます。つまり、
・売上にかかる消費税が0円
・仕入や資材にかかった消費税は全額控除つまり還付される可能性
があり、特に原則課税の農家には収益にはプラスになるかもしれません。

【非課税・ゼロ税率についてはこちらのYahoo!ニュース記事が参考になりました。】

以下では、「食品消費税ゼロ」がゼロ税率(0%)として制度化された場合、消費税の課税方式ごとに農家への影響を見ていきます。


ゼロ税率の場合、消費税の課税方式別に見る「農家への影響」

原則課税の農家の場合

売上消費税が0円で、仕入・資材・燃料等の消費税が全額控除(=還付)になりますので収益にはプラスになる可能性があります。特に肥料・資材・燃料・機械更新等が多い経費率が高い農家では、消費税の還付を受けることになるかもしれません。

簡易課税を選択している農家の場合

簡易課税は、
「預かった消費税 × みなし仕入率」によって納税額を計算します。
売上に消費税がかからなくなると計算の前提となる「預かった消費税」が0円となります。その結果、原則課税では期待できた消費税の還付が発生しません。
したがって、「簡易課税のままで良いのか」という見直しが必要になります。消費税だけを考えれば、原則課税に戻した方が有利になりますが、食品消費税ゼロが期間限定で検討されていることや原則課税の事務負担、税務署に課税方法の変更届を提出する手間などを考えると判断は簡単ではありません。

免税事業者の農家の場合

特に、家族経営など小規模な農家で、インボイス登録していない免税事業者である農家は影響が比較的大きくなりそうです。免税事業者は現在、消費税を価格に含めて受け取り、国に納めていない-いわば「益税」構造となっております。
食品消費税ゼロになると、価格に消費税を上乗せできない限り、仕入・資材の消費税はそのまま負担することになり、実質的に手取りが減る可能性があります。直売・市場出荷が中心で、価格交渉力が弱い農家ほど影響が大きくなりそうです。

最後に

現時点では、何も決定されていないことからはっきりとは言えませんが、制度設計次第では 負担が生産者に来る可能性もあります。
したがって、現時点からご自身の課税方式や経営内容(食品消費税対象品目の売上割合や経費率等)を確認し簡単にシミュレーションをしておくことをお勧めします。
決して、「制度が決まってから考えはじめる」より、一歩先を見据えて準備しておくことが重要であると考えます。

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