昨年末、政府は令和8年度(2026年度)予算案を閣議決定しました。農林水産省関係予算についても、「令和8年度農林水産関係予算概算決定の概要」といった資料が公表されていますが、実際に目を通してみると、たくさんの制度名と数字が並び、
それが自分の営農とどう関係するのか
何をすれば使える可能性があるのか
が分かりにくい、というのが正直なところではないでしょうか。
しかし、予算とは国の施策を具体化したものです。つまり、「これから国がどの方向に農業を導こうとしているのか」が、最も端的に表れている資料でもあります。
補助金や支援策を活用したいのであれば、国が示す方向性に、ある程度経営を合わせていく必要があります。一方で、その方向性が自分の経営に合わないのであれば、あえて政策に乗らないという判断もまた、立派な経営判断です。
その判断をするためにも、予算の中身を大づかみに理解しておくことは、農業経営にとって重要だと考えます。この記事では、農家目線で、できるだけ分かりやすく令和8年度の農水省予算案を見ていきます。
「うちは小規模だから関係ない」は本当か?
農水省の予算と聞くと、「大規模農家や法人向けの話」「うちは小さいから関係ない」と感じる方も多いと思います。確かに、小規模経営であっても、国の施策に直接乗らずに経営が成り立っている農家は少なくありません。
ただし、農業は一人・一軒で完結する仕事ではなく、農地、用排水、集落、地域の共同作業といった地域との関わりの中で行う産業です。中山間地域対策や農地集積、スマート農業の共同利用など、個々の農家が申請しなくても、間接的に影響を受ける施策は数多くあります。
また、行政の支援は「自動的にもらえる」ものではありません。原則として、
・ 情報を知り
・ 要件を確認し
・ 必要であれば自分から問い合わせる
という行動を取らなければ、支援を受ける機会は限られます。そういった意味でも、「関係ない」と切り捨てる前に、一度全体像を知っておく価値はあります。
予算案を“超ざっくり”把握する
今年の予算、増えた?減った?
令和8年度の農林水産関係予算の総額は、2兆2,956億円で、令和7年度当初予算と比べて250億円増(前年比1.1%増)となっています。
大きな特徴として、財源の一部に日本中央競馬会(JRA)からの臨時・特定の拠出金(約250億円)が活用されている点が挙げられます。これは恒常的な財源ではないため、今後も同規模で続くかは注意して見ておく必要があります。
国が今「力を入れたい農業」は何か
予算案から読み取れる重点分野は、大きく次の4つです。
① 食料安全保障の強化
- 農地の大区画化
- 共同利用施設の再編・集約化
- スマート農業の推進
- 輸出産地の育成
- 水田活用の直接支払交付金
- 合理的な価格形成
- 米穀等安定生産・需要開拓総合対策事業
② 環境と調和のとれた食料システムの確立
- みどりの食料システム戦略総合対策
- 環境保全型農業直接支払交付金
③ 農業の持続的な発展
- 農業農村整備事業
- 新規就農者育成総合対策・雇用就農総合対策
- 農地中間管理機構事業
- 農業委員会交付金
④ 農村の振興
- 農山漁村振興交付金
- 鳥獣被害防止対策
(このほか、林野・水産分野の予算も計上されています)
なお、個人的な感想ですが、農水省資料よりも財務省の予算説明資料の方が、政策意図が整理されていて理解しやすいと感じました。
すべての農家が押さえておきたいポイント
国が本気で進めたい方向性
令和8年度予算では、新たな「食料・農業・農村基本計画」に基づく、農業構造転換集中対策(令和7~11年度)が引き続き重視されています。
具体的には、
- 農地の集約・大区画化
- 共同利用施設の再編
- スマート農業の導入
- 輸出を見据えた産地づくり
といった分野です。個々の農家が単独で取り組むというより、地域単位・組織単位での対応が前提になっている施策が多い点が特徴です。
物価高・資材高騰への対応
令和8年度当初予算案には、資材高騰対策として明確に独立した項目は多くありません。ただし、これらは令和7年度補正予算で対応済みであり、今後も状況が悪化すれば、令和8年度補正予算で追加対応される可能性があります。
価格転嫁・経営安定策
- コスト構造や取引価格の調査
- コスト指標の活用実証
- フードGメンによる取引監視
など、価格形成の「見える化」に関する予算が計上されています。すぐに所得が増える施策ではありませんが、長期的には重要な分野です。
新規就農者支援は続くのか
新規就農者育成関連予算は約133億円(前年差26億円増)に拡充され、就農準備資金・経営開始資金の交付単価は年165万円に引き上げられています。新規就農者向け支援は、引き続き国の重点分野です。
セーフティネット
また、収入保険や農業共済といったセーフティネット関連予算も、引き続き計上されています。
今年の予算を自分の営農に生かすために
採択されやすい農家の共通点
補助事業を見る際には、内容以前に要件の確認が重要です。
- 認定農業者
- みどり認定
- 地域計画で担い手として位置づけられている
といった条件は、採択要件になりやすい傾向があります。
「使わない判断」も立派な経営判断
補助金は「使わないと損」というものではありません。自分の経営に合わない投資を無理に行えば、かえって経営を圧迫することもあります。使わないという判断も、戦略の一つです。
令和8年度予算決定までの流れ(概略)
- 8月:概算要求
- 12月:政府予算案の閣議決定
- 1月~:国会審議
- 3月:予算成立
予算が成立した後、実際の窓口は市町村や都道府県の出先機関になります。ただし、現場の窓口でも詳細を把握しきれていないことは珍しくありません。
そのため、
- 国の資料で大枠を把握する
- 不明点を持ったうえで窓口に相談する
という姿勢が重要になります。


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